STUDIO tuuli

2024.07.16

2024上半期|展覧会レポート
write|Nagi Aosumi
photo|Nagi Aosumi
Japan

2024年もあっという間に後半戦です。
昨年に引き続き、上半期(1月〜6月)に行った展覧会をご紹介します。
2023年上半期の展覧会レポート

サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ―

角川武蔵野ミュージアムにて開催された、日本初の体感型ダリ展。
360度巨大映像空間に没入する体感型デジタルアートでダリの作品を楽しみました。
感想はこちらの記事をどうぞ。

サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ―

JAPANOLOGY

MEDEL GALLERY SHU にて開催された、イラストレーター Shishidomiaさん日本初開催の個展。
イラストレーターのYUYAさんにご紹介いただいて行ってきました。

登場するキャラクターたちは江戸時代の美しさと現代のファッションや文化を融合させた装いで、Shishidomiaさんの個人的な楽しい経験や新鮮な感覚、懐かしい思い出などを反映した「ジャパノロジー」という表現で描かれています。
日本とコロンビアのハーフである彼女が生み出した美しい世界観でした。

先着30名に配布される限定ステッカーもちゃっかりゲットしました。笑

キュビスム展 美の革命

国立西洋美術館にて開催された、日本で50年ぶりとなる大キュビスム展。
パリのポンピドゥーセンターからキュビスムの重要作品が多数来日し、そのうち50点以上が日本初出展しました。

「キュビスム」とは
20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックという2人の芸術家によって生み出されたアートムーブメント(芸術運動)のこと。
1908年にブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来します。
特徴は、伝統的な遠近法や陰影法による空間表現から脱却し、幾何学的な形によって画面を構成することです。

キュビスム展 美の革命

東京藝術大学 卒業・修了作品展

今年で72回目を迎える藝大の卒業作品展。
藝大生たちの集大成を観られるとして毎年話題になっている展覧会に初めて行ってきました。
気になっていた建築学科の作品から、デザイン、彫刻、油画、映像など、様々なジャンルの日本を牽引するアーティストたちの質の高い成果を堪能することができました。

感覚する構造

WHAT MUSEUMにて開催された、構造デザインについて、模型を介して体感から理解を深める展覧会です。
古代から現代までの名建築の構造模型を40点以上展示。
個人的には、月に人間が滞在するための月面構造物1/10の模型が興味深かったです。

4月26日〜8月25日までは後期展の「感覚する構造 ー法隆寺から宇宙までー」が開催されます。

建築倉庫

OfficialHPより

WHAT MUSEUMの建築倉庫では、常設展として約30以上の建築家や設計事務所から預かった600点以上の建築模型を保管・一部を公開しています。
建築学生が一度は訪れてみたい聖地のような場所。
私も模型づくりが好きだったので、久しぶりに興奮しました。

建築倉庫

キース・ヘリング展

森アーツセンターギャラリーにて開催された、ヘリングの80年代ニューヨークのストリートアートを楽しむ展覧会。
6メートルに及ぶ大型作品を含む約150点を展示。

ヘリングのイラストは、誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
特にユニクロとのコラボが印象的ですよね。
31年という短い人生の中で、社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズに対する偏見と支援不足に対して闘い続けたヘリングのアートを体感しました。

キース・ヘリング展

フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築

パナソニック汐留美術館にて開催された、アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトの展覧会。
「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」などが有名ですが、日本でも「帝国ホテル二代目本館」や「自由学園」などを手掛けています。
本展では帝国ホテルを基軸に、日本初公開となる精緻で華麗なドローイングの数々を楽しめました。
実はライトは熱烈な浮世絵愛好家で、何度も来日するほど日本と深い縁で結ばれた建築家であったことを本展で初めて知ることができました。

フランク・ロイド・ライト展

Mid-Century MUJI展

無印良品 銀座にて開催された、1940 ~ 1960年代に生まれたデザイン様式「Mid- Century Modern」をテーマにした展覧会。
私の自宅兼オフィスも「Mid- Century Modern」をテーマにインテリアを組んでいるので、これは絶対に観なければ!ということで行ってきました。

「Mid- Century Modern」を意識した特有の色やマテリアルのパーツが施された無印良品のプロダクトと、そのプロダクトで構成する“ 建築家の部屋 ”をイメージした空間が展示されました。

Mid-Century MUJI展

宇野亞喜良展

Tokyo Art Beatより

東京オペラシティアートギャラリーにて開催された、日本を代表するイラストレーター、グラフィックデザイナー宇野亞喜良の約14年ぶりとなる大規模個展。

1960年代の日本において「イラストレーション」「イラストレーター」という言葉を広め、時代を牽引してきた宇野さん。
イラストレーション、ポスター、絵本、書籍、アニメーション映画、絵画、舞台美術など多岐に渡る作品900点以上を通して、膨大な仕事の全貌を鑑賞できました。

ちなみに私の好きなバンド、ドレスコーズの2021年発売アルバム『バイエル』のジャケットも宇野さんが手掛けています。

宇野亞喜良展

藝大動物園 Welcome to the art zoo!

藝大アートプラザにて開催された、企画展「藝大動物園 Welcome to the art zoo!」
想像の世界にしか存在しない動物、本物以上にリアルな生き物、生物なのか無生物なのかわからない存在など。
お隣の上野動物園とはひと味違う、藝大アーティストたちによる動物園を楽しんできました。

藝大動物園

MUCA展

森アーツセンターギャラリーにて開催された、テレビ朝日開局65周年記念の「ICONS of Urban Art展」

MUCAは、ドイツ初のアーバン・アートと現代アートに特化した美術館で、1200点以上のコレクションを誇ります。
世界的に有名なバンクシーやカウズをはじめ、Shepard FaireyやVHILSといった現代アーティストたちのアーバン・アートを体感できる本展。

私自身、大学で建築都市デザイン学科に所属していたこともあり、現代の、そして世界の都市空間で発達した視覚芸術を観覧できるということで、とても興奮して足を運びました。

MUCA展

オードリー・ヘプバーン写真展

広島の福屋八丁堀本店にて開催された、「生誕95年 オードリー・ヘプバーン写真展 オードリー・イン・シネマ」
オードリーが出演した映画をテーマに、著名な写真家の作品を含む約120点に加え、雑誌等で撮影されたエレガントでチャーミングな表情や晩年の活動を記録した写真からセレクトした写真展。

実はオードリー好きの母に連れられて行ったのですが、全盛期はほぼ毎年のように映画に出演しており、私のイメージするオードリーとは異なる顔をたくさん知る事ができて、とても良い経験でした。

フィンランドのライフスタイル展

ひろしま美術館にて開催された、生活を彩るフィンランドのデザイン展。
アール・ヌーヴォーやバウハウスから影響を受けながらも、自然からインスピレーションを得た独特な形と色彩は、日本人も好きな方が多いですよね。

私も大好きなイッタラやアルテックをはじめ、フィンランドのデザイナーたちによる装飾性と利便性を兼ね備えた、人々の生活に彩りを添えるアイテムを楽しむことができました。

余談ですが、ひろしま美術館は広島市内の中心地に位置しています。
「平和の森」という緑地の中にひっそりと佇んでいるので、美術館周辺は街中であることを忘れるほど静かで落ち着いた空間となっています。
食事ができるカフェも併設されているので、ぜひ広島市を訪れた際は休憩がてら訪れてみてください。

デザインフェスタ2024春

展覧会ではないのですが…
人生で初めて「デザフェス」というものに行ったので、この場を借りてご紹介します。

東京ビックサイトにて2日間に渡り開催された「デザインフェスタvol.59」
「自由に表現できる場」として、オリジナルであれば無審査で誰でも参加できる国際的なアートイベントです。
年に2回開催で、魂を込めたアート作品や日常を彩る雑貨、アーティストとの交流、ライブパフォーマンスや世界各国のグルメなどを楽しむことができます。

普段SNSで拝見しているクリエイターさん達や大学の後輩など、何人もの同業者とお話しすることができて、非常に刺激的な1日でした。
私と同じくデザイナーの従姉妹と行ったのですが、帰りに「いつか二人で出展したいね!」と話が盛り上がりました。

マティス 自由なフォルム

国立新美術館にて開催された、マティスの大規模な展覧会。
昨年、東京都現代美術館で開催された「マティス展」でこれでもか!というほどマティスの作品を堪能したので、今回はパスしても良いかなぁと思っていたのですが…
なんと本展では、「マティス展」では映像展示だけだったロザリオ礼拝堂の実寸大の空間展示があるとのこと。
昨年のフランス旅行では惜しくも行けなかったロザリオ礼拝堂に、いつか行くときの予習として観に行ってきました。笑

マティスグッズコレクターの心をくすぐる、マティスの超大作『花と果実』柄のPCケースもしっかりゲットしました。(本物はなんと4.1×8.7m!)


マティス 自由なフォルム

遠距離現在

国立新美術館にて開催された、「遠距離現在 Universal / Remote」は、「Pan- の規模で拡大し続ける社会」、「リモート化する個人」の2つを軸に、資本と情報が世界規模で移動する今世紀の状況をアートを通して表現しています。

監視システムの過剰や精密なテクノロジーのもたらす滑稽さ、また人間の深い孤独を感じさせる作品群は、ポストコロナ時代の世界と真摯に向き合っているようにも見えます。

私が特に印象的だったのは、デンマークの作家ティナ・エングホフの写真作品。
一見すると一般家庭の一室を撮っただけの写真に見えますが、実は病院や自宅で孤独死した人々の自宅を撮影したものなんです。

美術手帖より

作品の横には「心当たりのあるご家族へ ー 男性、1964年生まれ、自宅にて死去、2003年7月31日発見」など一つひとつに説明書きがありました。
この人はどんな人で、どんな死に方をしたんだろう。ぬいぐるみを可愛がっていたんだな。お酒が好きな人だったんだな。など、画角には写っていない「人」を想像させる作品でした。

遠距離現在

ねずみくんのチョッキ展

松屋銀座にて開催された、絵本『ねずみくんのチョッキ』誕生50周年を記念した展覧会。

赤いチョッキを着たちいさな主人公、ねずみくんが登場する『ねずみくんのチョッキ』は、作家・なかえよしを、画家・上野紀子夫妻の共同作業によって生まれました。
『ねずみくんとホットケーキ』や『ねずみくんのプレゼント』など、シリーズは巻を重ねて2024年現在41冊、累計490万部を超える人気シリーズに。

私も子ども時代とてもお世話になったので、ねずみくんの誕生日会に参加する気持ちで、ねずみくんの歴史や原画を楽しみました。


ねずみくんのチョッキ展

テルマエ展

パナソニック汐留美術館にて開催された、「お風呂でつながる古代ローマと日本」をテーマにした展覧会。
映像や模型、再現展示を通して古代ローマの公共浴場(テルマエ)を分かりやすく紹介しています。
また、テルマエだけでなく国内に残される地方色豊かな温泉文化にも触れながら、日本のお風呂の歴史も概観できます。
マンガ『テルマエ・ロマエ』の主人公・ルシウスが浴場を通して日本とローマを往復したように、それぞれの浴場文化を体感する展示でした。

テルマエ展

北欧の神秘

SOMPO美術館にて開催された、ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画展。
ノルウェー国立美術館、スウェーデン国立美術館、フィンランド国立アテネウム美術館から選び抜かれた約70作品を展示。

北欧の自然や民話、街に暮らす人々等を描いた絵画作品の展示に合わせて、それらをイメージした世界を再現した音空間を展開していました。
森の妖精やトロールなど、絵画に登場するような存在たちが自然に溶け込んで描かれ、神秘的で少しこわい雰囲気の作品が印象的でした。

北欧の神秘

ホー・ツーニェン エージェントのA

東京都現代美術館にて開催された、シンガポールを拠点に活動するアーティスト、ホー・ツーニェンの個展。
最初期の作品含む6点の映像インスタレーション作品が展示されていました。
東南アジアの歴史的な出来事、思想、個人または集団的な主体性や文化的アイデンティティに独自の視点から切り込む作品群です。

特に印象に残ったのは、上映時間33分33秒の「一頭あるいは数頭のトラ」という2017年の作品。

東南アジアにおける人間とトラの関係を描いた3Dアニメーションの本作。
向かい合った2つのスクリーンに挟まれて作品を鑑賞するのですが、2つを一度に視界に収めることはできないので、鑑賞者は二者択一を迫られます。
無重力の中で片方は人間、反対側はトラによる、語りと歌。

はじめて受け取る表現方法で、もちろん全てを受け取りきれず、ただ圧倒されるだけで終わってしまいました。
もっとこのような映像作品に対する免疫や引き出しが欲しい…。

ホー・ツーニェン エージェントのA

サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」

Tokyo Art Beatより

東京都現代美術館にて開催された、現代アーティスト「サエボーグ」による新作のインスタレーション展示。
「サエボーグ」は半分人間で、半分玩具の不完全なサイボーグとして、人工的であることによって、性別や年齢などを超越できると捉えるラテックス製のボディスーツを自作し、パフォーマンスとインスタレーションを国内外で展開しているアーティストです。

今回は、何の有用性もないのに、なんだかんだ人間の感情やファンタジーを投射されることで生きる(ある意味「愛」の力だけで生きているような)モノ=「ペット」が主役の作品でした。
その「ペット」(私が観たときは水色の犬)を人間が演じていて、仕草やボディースーツの形状で「人間らしさ」を感じてしまい、皮肉や罪悪感を覚えました。

サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」

モンスターアタックトウキョウ展

表参道にあるギャラリーMATにて開催された、モールアーティストTAKUMA FUJISAKIによる個展。
Instagramで気になっていて、展示最終日に行ってきました。

細い針金にカラフルな糸繊維を絡ませた「モール」で多種多様なモンスターを製作されています。
ユニークでポップな世界観に、終始「かわいい!」と呟いてしまいました。

モンスターアタック展

まとめ

今期はわりと忙しく、あまり展覧会に行けてないなぁという印象でしたが、2023年上半期を6展(デザフェスを含む)も上回る結果となりました。
意外と行ってたんだなぁ。

今年も小さい展示から大きい展示まで、国や時代も様々なアートにたくさん触れることができて本当に楽しかったです。
7月も早速「TOKYO GENDAI」に行ってきまして、2024年後半戦もどんなアートに出会えるのかワクワクしています。