STUDIO tuuli

2024.01.28

隈研吾とサルバドール・ダリ
write|Nagi Aosumi
photo|Nagi Aosumi
角川武蔵野ミュージアム

1月9日 成人の日

角川武蔵野ミュージアムで開催中の「サルバドール・ダリ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ―」に行ってきました。
今年最初のアートめぐりです。

去年の10月パリを訪れた際に「Dalí Paris」に行ったこともあり、今回の企画展、特にダリ作品のインスタレーションが気になっていました。
そして角川武蔵野ミュージアムは、世界的建築家(新国立競技場の設計でも有名な)隈研吾が手がけた建築でもあります。

実は一番のお目当ては、こちらの隈研吾建築のカプセルトイ。可愛すぎる…!

2022年1月下旬に発売され、角川武蔵野ミュージアムの館内に設置してあると聞きつけて行ってきました。

ラインナップは
・高輪ゲートウェイ駅
・角川武蔵野ミュージアム
・Sunny Hills
・浅草文化観光センター

隈研吾の名建築が手のひらサイズになるなんて、建築関係の人はみんな欲しがるのでは。

しかし、残念ながら既に販売終了しているとのことで…。
お目当てをゲットすることはできませんでしたが、新年から隈研吾建築を拝むことができて良い気分でした。

角川武蔵野ミュージアム

JR武蔵野線「東所沢」駅から10分ほど歩いていると突如として巨大な建築が現れます。

2020年に「ところざわサクラタウン」の敷地内にオープンした角川武蔵野ミュージアム。

ちなみに「ところざわサクラタウン」は、KADOKAWAと埼玉県所沢市が「みどり・文化・産業」が調和する地域づくりを目指し、協働で進めているプロジェクト「COOL JAPAN FOREST構想」によって建設された巨大施設だそう。

隈研吾建築といえば「木材」をふんだんに使用し、近代的に「和」のテイストを溶け込ませた建築が印象的ですが、同ミュージアムは約2万枚もの「花崗岩」を外壁に使用し、「巨大な岩」をモチーフにした建築となっています。

1階にはグランドギャラリーやマンガ・ラノベ図書館
2階には受付やカフェ、ミュージアムショップ
3階にはアニメミュージアム
4階にはアートギャラリーや本棚劇場、ワークショップルーム
5階には武蔵野ギャラリー、レストラン
などが入っています。

アートにそれほど興味がない方でも大丈夫。
児童書やコミックなど合わせて約37,000冊が集まる常設の「マンガ・ラノベ図書館」は、大人から子どもまで誰もが楽しめる娯楽の世界となっています。

また、約8メートルの巨大本棚に囲まれた図書空間「本棚劇場」も迫力満点で、非日常を体験することができるので、休日デートにもぴったり。

©︎角川武蔵野ミュージアム

建築家・隈研吾

隈研吾は「和の大屋」とも呼ばれるほど、高いデザイン性と木材などの自然素材を使用した「環境に溶け込む建築」が特徴の建築家です。

サニーヒルズ(港区青山)、高尾山口駅(八王子市)、国立競技場(新宿区)、根津美術館(港区青山)、スターバックスコーヒー太宰府天満宮表参道店(福岡)など…。
どの建築にも必ずと言っていいほど木材が使用されています。

国立競技場 ©︎隈研吾建築都市設計事務所
スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店 ©︎隈研吾建築都市設計事務所
南三陸311メモリアル ©︎隈研吾建築都市設計事務所

また、ジャパニーズモダンな雰囲気が海外でも注目され、世界各国で様々な建築を手がけています。

イタリア|Padova Congress Centre ©︎隈研吾建築都市設計事務所
シドニー|The Exchange ©︎隈研吾建築都市設計事務所
ベトナム|Waterina Suites ©︎隈研吾建築都市設計事務所
スペイン旅行で訪れたCasa Batllóの一部(階段とアトリウム)も隈研吾作品でした!

サルバドール・ダリ

スペイン出身の芸術家サルバドール・ダリは、シュルレアリスムの芸術家の中で最も影響力のある人物です。

※シュルレアリスム(超現実主義)とは、「意識と無意識の混ざった状態」つまり「夢と現実の混ざった状態」こそが本当の現実という考えで、よく耳にする「シュール」はシュルレアリスムの略語です。
感覚としては「周りと違っている」「ヘンテコな」「奇抜な」という意味でこの言葉を使っているかと思います。

代表作の「記憶の固執」は、誰もが一度は見たことがあるのではないでしょうか。

1981 記憶の固執

「時空の歪み」を象徴しているというその絵には、静寂な雰囲気の海岸に、プールや一本の木、まるでチーズが溶けたかのように柔らかそうな時計が3つ点在して描かれています。
(実際にとろけたカマンベールをモチーフに描かれているそう。)

このようなダリの作品は、見る人を「夢の中のヘンテコな世界」に連れ込みます。
さらに彼の絵には戦争や宗教、心理学や物理学などを、エロスやグロテスクのような皮肉めいた表現で取り入れている作品が目立ちます。

1944 目覚めの一瞬前に柘榴の周りを蜜蜂が飛びまわったことによって引き起こされた夢

裕福な家庭で育ったダリは、幼少期から70代後半までに絵画だけでなく、彫刻や版画、舞台装置、衣装、ジュエリー、香水、映像作品など幅広い芸術活動を行っています。

パリのモンマルトルの丘にあるギャラリー「Dalí Paris」では、今にも折れそうなほど細ーい足の「宇宙象」のブロンズをいくつも見ることができました。

権力のシンボルである「象」の足が蜘蛛のように細長く、「強さと弱さの対比」が怪しくも魅力的に表現されています。

とろけた時計がハンガーに…。

ダリがシュルレアリスムに目覚めたきっかけや愛する妻ガラについてなど、強烈なエピソードは山ほどありますが、全てに触れると果てしないので今回は軽めな紹介で。

常識を無視した奇妙で摩訶不思議なダリの作品は、子どもも大人も好奇心を刺激され、その世界観にどっぷりハマってしまうことでしょう。
アート鑑賞初心者の方におすすめの芸術家のひとりです。

展覧会の感想

©︎角川武蔵野ミュージアム

今回の展覧会「サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ―」は、ダリの歴史や名言を学べる他、360度巨大映像空間に没入する体感型デジタルアート(インスタレーション)でダリの作品・世界観を楽しむことができました。

私が特に印象的だったのは、パリで見たブロンズの「宇宙象」が映像化され動いている姿でした。
ただでさえ細長くて気持ち悪い足の象が、歩くことによってさらに気持ち悪さ倍増…
なのになぜか神秘的で、高次元の存在のように感じる不思議。

5月末まで開催しているので、気になった方はぜひ。