STUDIO tuuli

2023.11.26

サグラダ・ファミリアへ|Barcelona
write|Nagi Aosumi
photo|Nagi Aosumi
Sagrada Familia, Barcelona

バルセロナ旅行の大目玉、アートや建築に興味がない方でも一度は見聞きしたことがあるであろう「サグラダ・ファミリア」へ行ってきました。
以前の記事でも書きましたが、私が建築学生の頃にサグラダ・ファミリアへ行く機会を一度逃しているので、約5年越しのリベンジを果たすとき。

事前学習として、9月には東京国立近代美術館で開催された「ガウディとサグラダ・ファミリア展」にも行ってきました。笑

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滞在したホテルがあるサン・パウ病院からサグラダ・ファミリアまでは一直線で徒歩10分ほど。
現在、当日券の販売は行われていないので、事前にオンラインチケットを購入することをお忘れなく。(日本語音声ガイド付きのチケットがおすすめ。)

バルセロナのいろんな場所から眺めることができるサグラダ・ファミリア。
近くで見ると本当に大きい!
塔の上を見上げるだけで首が痛くなるほどです。

中心の一番大きい塔「イエスの塔」は完成すると高さ172.5mになるそう。
これはガウディが「人間が神を超えてはならない」という考えから、バルセロナで一番高い「モンジュイックの丘」の標高173mより低くなるように設計されています。

完成しない建築

「完成しない建築」としても有名なサグラダ・ファミリアは1882年に着工し、140年以上経った現在でも未完のまま。
なお、2026年(ガウディ没後100周年)に完成予定と発表されていましたが、新型コロナウィルスの影響で工事の中断・延期が発生しているため完成の目処は立っていません。

突然ですが、ガウディのこんな名言をご存知でしょうか?
彼が現役でサグラダ・ファミリアの建設に携わっていた頃、「いつになったら完成するんだ!」という批判や嘲笑に対して、

「神は急いでおられない。」と反論したガウディ。

この名言は実は意訳で、本来は「サグラダ・ファミリアの工事はゆっくり進む。なぜなら私のクライアント(神)は別に急いでいないからね。」と言ったそう。

サグラダ・ファミリアはカトリック教会のバシリカであり、建設費は観光客からの入場料で賄っています。
ガウディが神に対する信仰心と職人としてのプライドを強く持つ人物だったと考えると、民衆のために早く完成させることよりは、「神のためにより良いものをつくる」ことが目的だったのかもしれません。

神が急かさない以上、急ぐ必要がないということです。

サグラダ・ファミリア概要

知らない方も多いかもしれないので、サグラダ・ファミリアの歴史を簡単におさらい。

民間のカトリック団体が教会として計画し、建築家フランシスコ・ビリャードが無償で設計を引き受けます。

1882年:建設工事がスタート
1883年:主任建築家としてアントニ・ガウディが就任
(フランシスコ・ビリャードは団体との意見の対立から辞任)
1889年:地下の礼拝堂が完成
1926年:路面電車に撥ねられガウディ死去
1930年:「生誕のファサード」完成
2005年:ユネスコ世界文化遺産に登録
2018年:「受難のファサード」完成
2021年:「聖母マリアの塔」完成
(全18基が計画されている尖塔の中で2番目に高い塔)

サグラダ・ファミリアの特徴の一つは、3つのファサードが設けられているということ。
「ファサード」とはフランス語の「façade」を語源とする言葉で、建築物の「正面デザイン」を指します。
正面なので、一般的に大聖堂や教会には「ファサード」は一つしか存在しません。

しかし、ガウディはこの固定概念をも覆し「生誕のファサード」「受難のファサード」「栄光のファサード」と呼ばれる3つのファサードを設計しました。

生誕のファサード

現在、一般観光客の入場口となっているのが「生誕のファサード」
1892年に着工し、1930年に工事(一部彫刻を除く)が完了しました。

ガウディ本人が細部に至るまで設計し、彼の人生の中で最も完成に近い状態まで見ることができたのが「生誕のファサード」です。

このファサードは4本の塔と3つの門「希望の門」「愛徳の門」「信仰の門」によって構成されています。
壁面の彫刻には、キリストの誕生から青年期までの成長が描かれています。

「愛徳の門」救世主イエスの誕生を祝福する彫刻群で飾られている

中央のメイン入り口「愛徳の門」の扉は愛を象徴するツタの彫刻で埋め尽くされています。
ツタの彫刻をよーく見てみると蝶々やてんとう虫、トカゲ、トンボなど、至る所に生物の彫刻を見ることができます。

ちなみに、2013年からサグラダ・ファミリアで主任彫刻家を務めるのは日本人彫刻家の外尾 悦郎さん。
25歳の時(1978年)に単身スペインへ渡り、多くの苦労を重ねながら彫刻家として認められました。
約200名の建築家や彫刻家が働くサグラダ・ファミリアの中で最長期間勤め続けている外尾さんは、ガウディの意志を最も深く受け継ぐ人物と言われています。

受難のファサード

生誕のファサードの反対側にあるのが「受難のファサード」
こちらはカタルーニャ出身の彫刻家ジョセップ・マリア・スビラックスがガウディのスケッチを元に現代風のアレンジを加えて設計しました。
イエス最後の三日間の「受難と死のストーリー」が描かれています。

中央上部には十字架磔刑の彫刻
ユダの裏切り(ユダの接吻)

「生誕のファサード」と比較すると、人物はデフォルメされていて表情も暗く、華やかさや繊細さには欠ける印象です。

「福音の扉」イエスの最後の2日間にまつわる福音書の物語がぎっしり。

栄光のファサード

3つのファサードのうち唯一建設途中なのが「栄光のファサード」
「イエスの栄光」と「人類の永遠の生への道」がテーマとなっています。
完成すれば正式な大聖堂の入場口となる予定で、生誕や受難より規模が大きくなることが予想されています。
ただ、現在は工事がほぼストップしていて、周辺の住民は立ち退きを求められているのだとか。

教会の内部

いよいよ教会の内部へ。
内部は高い天井に覆われた広大な空間となっており、生き物のからだの中に入ったかのような包容力を感じます。

天井を支える無数の大きな柱は自然界にある木々の幹をモチーフにしているそう。
上部では細い柱に枝分かれしていて、まるで地面から生えてきた巨大な植物のようです。
これはデザイン面だけでなく、天井の荷重を分散させる機能的な役割も果たしています。

天井を見上げると、お花がたくさん咲いているようにも見えます。とにかく天井が高い!
西側は赤やオレンジなど、暖かみのあるステンドグラス
東側は青や緑など、涼しげなステンドグラス

時間帯によって太陽が当たるステンドグラスの位置が変わるため、ステンドグラスから降り注ぐ光によって教会内部の色も徐々に変化していきます。なんて神秘的…!

サグラダ・ファミリアの魅力の一つであるステンドグラスは、バルセロナの画家でありガラス職人の「ジュアン・ビラ・イ・グラウ」がすべて手がけたそうです。

完成するまで待ってます

サグラダ・ファミリアは教会内部だけでなく、塔の上に登れるチケットもあり、バルセロナ市街を一望することができます。(生誕のファサード側か受難のファサード側かを選択できる)

また、聖道具保管庫や地下博物館など、すべてを見て回ろうと思うと3時間ほどかかります。
朝一だと観光客も少なめなので、オープンと同時の入場チケットで入ることをオススメします。

実はサグラダ・ファミリアは、私の両親も30年ほど前に新婚旅行で訪れていました。
当時はどれほどの進捗状況だったかわかりませんが、最近まで「2026年に完成する」と言われていたので、完成したら次は両親を連れて行こうと企んでいました。

残念ながら完成はまだまだ先になりそうなので、(両親が元気なうちに完成するかしら?)
「またバルセロナに行く理由ができた」という前向きな気持ちで、気長にその時を待ちたいと思います。